案内された場所は理容室と言うよりも、女性が通う美容室という雰囲気。白衣の女性が登場し、「私が担当します。まず、シャンプーの前に特別な活性液を使ってマッサージをいたします」
学校の理科室のあるような茶色のガラス瓶を持ち出し、トニックを振り掛けるような感じで頭皮に掛けたが、ちょっと刺激を感じたぐらいで香りも感じず、それがどんな成分かはまったく不明だった。
やがて始まったマッサージだが、随分と慣れているようで気持ちよく、前面にある三面鏡に映る自分の姿を見つめていた。
「それでは、これからシャンプーをいたします」とシャンプー液で泡立たせ、それが終わると座っていた椅子を回転、背もたれを倒して美容院みたいに洗面台が後方になった。
理容店でシャンプーする場合の大半は前方タイプだが、後方タイプは初めてのこと。不思議な体験だと思いながら身を任せていた。
洗い流すと「リンスをしますね」と続き、終わると「トニック」らしい刺激の強い液体が振り掛けられ、またマッサージが始まったが、それは頭皮だけではなく、首から肩、背中に及ぶものだった。
「あちらへどうぞ」と次に案内されたのは大手家電が販売しているマッサージ器のような椅子。座ると背もたれを倒され、室内照明が暗くなり「リラックスのひとときをどうぞ」と言われると同時に耳元で音楽が流れ出した。
それは、小川のせせらぎや小鳥の囀る声。その遠くで静かなオーケストラの音色が聞こえている。ふとリラックスタイムが何分間かを確かめておくべきだったと後悔した。それほど心地よく、ちょっと昼寝をしたい状態になってしまっていた。
「いかがでしたか?リラックスされましたか?」とアシスタントが入って来たのは、それから30分後ぐらいだったように思うが、そのまま案内されてあのデスクトップのあった部屋に入った。
すぐに白衣の男性が入室、前に座ると同時に美容室で担当してくれた女性が入室し、手にしていたお手拭みたいなタオルをテーブルの上に置いた。オシボリだったらこちらに出される筈だが、それは白衣の男性の方に出されたので不思議に思っていたら、「実は」と切り出した言葉に衝撃を受けた。
「先ほどのシャンプーで抜け落ちた毛髪ですが、数えてみますと154本ありました」
今考えれば、それが事実だったのかどうかは疑問だが、そんな環境で言われた側の心境は理解出来るだろう。そこから白衣の男性の発言に聞き入る状況、それは間違いなくマインドコントロールの世界であったような気がしている。
やがて契約を結んでしまった筆者。5日に一回のペースでヘア・エステに行くことになったが、高額な費用を払い込むとシャンプー前の溶液、シャンプー、リンス、トニックなどが数本ずつ与えられ、娘に大笑いされたある機械を持ち帰ったのだが、さすがにそれだけは使用することはなかった。
その器具だが、分かり易く言えば血圧計測する場合の加圧システムの親分みたいなもので、頭部に巻いて加圧して「血行」をよくする代物だそうだが、あまりにも不恰好なので決行することは一回もなかった。
そんな体験を友人達に話したら、「強迫商法じゃないか」と言われたが、面白い体験をしたと思っているこの頃である。因みに、筆者の髪は、それから20数年の経過。少し薄くはなったが、年齢相応の状態であると書いておこう。
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