過日に「借りと貸し」のタイトルで、体験した医療ミスについて書いたが、今日は、こんな出来事もあったと回想しながら、ちょっと長くなるがしたためておこう。(信じられないだろうが、本当の話です)
高知へ3人で出張に行った際のこと。用件が済み、食事も終わってホテルの部屋で寛いでいると、2人が同室していた隣室から電話があった。
「飲みに行きましょうよ」との誘い。時計を確認すると午後11時少し前。高知の歓楽街として名高い「はりまや橋」までは近いが、知らない店に行くのも抵抗があったので、昔から交流のあった地元の割烹の知人に電話を入れた。
「任せてよ。私も参加するよ。分かり易い所だから先に行っててよ」と返され、予約をしてくれ、店を片付けてから行くとのことだった。
ホテル玄関からタクシーに乗り「はりまや橋」付近で降り、聞いた通りに存在していた店がすぐ分かったが、中に入ったら3人の女性がいるラウンジ。平均年齢が50歳をはるかに超えている女性ばかり。それは知人好みであったのかは知らないが、クラブを期待して連れて行った若い男性達には予想外という表情が垣間見えた。
やがてやって来た知人を交えて1時間ほど過ごし、勘定を済ませ知人と別れ、ホテルへ戻ろうと言うことになった。
多くのタクシーが並んでいるが、人の姿は疎ら。それは東京や大阪の歓楽街とは異なった光景であった。
タクシーに乗ってホテル名を伝えて走り出した。後席でほろ酔い気分でいると、どうもおかしな感じがする。往路は5分も経たない内に到着した行程。確かワンメーターだったのに、復路は全く違う道を走行しているとしか思えず。メーターに目をやると深夜料金としても変で、もう1000円をはるかに超えている。
「運転手さん、来た時の方向と違っているような気がするのだけど」と言ったのは、助手席に座っていた若い人物。続いてホテルの名称を再確認すると、予想もしなかった運転手さんの言葉が。
「申し訳ありません。勝手な思い込みをしていました。
そんな謝罪に続いて聞いた言葉が面白かった。我々の宿泊するホテルとよく似た名称のホテルがもう一つあり、勘違いをされていたからである。
Uターンをして我々のホテルへ向け走り出したが、ホテルに到着する前に「プロとして恥ずかしい限りです。料金はいただきませんから」と言われるとすぐに玄関に到着した。
料金メーターを見ると2700円だった。運転手さんが降りてきて平身低頭され、料金はいただきませんの一点張り。「そんな訳には」と押し問答が始まったが、それを揉め事と勝手に解釈してしまったフロントのスタッフがやって来て「どうかなさいましたか?」と割って入る。そこで事情を説明し、「ねえ**(ネームホルダーを見て確認)さん。こんな場合にはお客さん側の言うシナリオで決めるべきでは?」と問うと、「左様でございますね」とだけ返した彼。
そこで運転手さんに向かって結論を出した。「フロントの方が言われるように、ここは客である私の言うことに従って欲しい。実際に2700円分の走行をされたのは事実だし、勘違いだと一方通行で解決策を提案されても困るのです。ここは、私の言う通りにしてください」
「お客様がそう仰るのだから、そうされては」とホテルマン。それでも納得出来ない表情を見せる運転手さん。そこで財布から3000円を出し、「料金2700円と高知での面白い思い出を与えてくれた御礼の300円、含めてこれで解決としましょう」
「そんな!」と引き下がろうとした運転手さん。目には涙が浮かんでいた。それを見て「嫌な客を乗せることもあるでしょう。私達も同じで、嫌なタイプの運転手さんに遭遇することもあるのです。あなたは誠心誠意謝罪をされ、プロとして恥ずかしいと仰いました。しかし、これは我々にとって忘れられない思い出になるのです。だから受け取ってください」
そこで運転手さんが号泣され、ホテルマンも貰い泣きをしている。「世の中にはこんなお客様もおられるのですね。明日からそんなお方との出会いを願って走ります」
その言葉でやりとりが解決をみたが、ロビーに入ったところでホテルマンから「いやあ、素晴らしい出来事を体験させていただきました」と言われ、ちょっと恥ずかしい心情に。
この出来事には続きがあり、助手席にいた若い人物が帰宅してからお父さんに体験談を聞かせたら、えらく感動されたとメールがあったのが懐かしい。
あの運転手さんが会社に戻られてからの会話や、家に帰られてから家族に話されたらどうだろう。また、その後に乗車されたお客さんへの話の種になったら、この金額でどれほどの人を幸せに出来たのだろうと考えると、この「幸せ列車」にぴったりのような気がするのは私だけだろうか?
正直言うと、酔っ払っていたからかもしれないし、俗に言われる「ええ格好しい」だったのかもと思っていることも付記しておこう。
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