昨秋のことだった。知人の息子さんの結婚披露宴に出席した。予想外にメインテーブル。<堅苦しい席で参ったなあ>と困惑の中で始まり、新郎新婦が入場してきた。
ここで隣席の方が俯かれ嗚咽されている。
<特別な関係でも?>と思って出席名簿を確認したが、新郎新婦に直接つながる肩書きではなく<ご両親の友人>という私と同じ立場かなと勝手な想像をしたが、知人との長い付き合いの中で、この方の存在を耳にしたこともなく、心の中で「?」が生まれていた。
祝辞が済み、乾杯があって祝宴が始まると会場が和やかな空気になり、一変して賑やかになった。
隣席の方々とビールやお酒を注ぎ合って会話が始まる。そこで、嗚咽の理由を先方さんから語ってくださった。
「実は、中学校に通っていた娘を交通事故で亡くしましてね。生きていたら適齢期なのですよ」
死んだ子の齢を数えることは悲劇を体験された方々に共通することだが、生きていると仮定して同年代の子供を見られるには本当に辛いものがあるようだ。
天国で結婚されているかもしれませんねと慰めてあげたかったが、それがとても救いになるように思えず、共に涙で乾杯と献杯をするしか出来なかった。
定年退職を迎えた人物だが、夫婦で行きたかったあちこちの温泉地へ出掛け、教えてくれる旅先での体験談が面白いので紹介しよう。
宮崎のある旅館での夕食時、大きな水槽のある食事処で「定年退職で記念旅行を」と仲居さんに告げると、「記念にどうぞ」と水槽に泳ぐ魚の説明をされたそうで、勝手な思い込みから「サービス」と勘違い。立派な「石鯛」を頼んだら、精算時に驚くほど高額な料金を請求されたそう。
「記念に如何ですか?」と言われたら勘違いをすることもなかったのだろうが、こうなっては後の祭りという現実。黙って支払いを済ませたそうだが、奥さんに頭が上がらないと笑っていた。
大企業の幹部として活躍していたことから高額な退職金を貰ったそうだし、受け取るであろう年金の額も多い筈。羨ましく思いながら別の体験談を聞いた。
別府のある旅館での出来事。夕食前に大浴場へ行こうと鏡台を見たら、手札ぐらいの大きさで写真撮影された特別料理の案内が目に留まり、「お願いします」とフロントに電話を入れたそう。
やがて大浴場から戻るとテーブルの上には夕食の用意がされており、風呂上りの美味しいビールを飲みながら箸を手にした時、「失礼します」と仲居さんが来室、別注した料理を運んで来てくれた。
それを目にした瞬間、本人は「嘘!」と心の中で叫んだそう。注文したのは「ヒラメの薄造りと」と「鯛の塩焼き」だったが、写真から想像していたものと全く量や大きさが異なっており、「こんなにたくさん、大丈夫ですか? これ、いつも4人でお召し上がりになるのですよ」と言われ、早合点で勝手な思い込みをした自分の愚かさに呆れ果て、「母ちゃん、ごめん」と奥さんに謝ったそう。
さて、その二品だが、どう考えても二人では無理。そこで手を付ける前に「仲居さん達で」と、半分を頼んだと言うが、彼は「あの写真では小さな皿で、鯛も小振り見えた」と後悔の念を語り、「そもそも価格の表示がなく『時価』とあったのだから勝手な思い込みをしてしまうではないか」とぼやいていた。
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もうすぐクリスマスだが、このシーズンがやって来ると思い出す出来事があるので紹介を。
ある一流ホテルのフレンチレストランでのこと。夜の帳が下りた頃、友人4人と食事に行ったところ、窓側の席に置かれた「リザーブ」という英語の文字が目に留まった。どんな人達がやって来るのだろうと思っていたら、我々が食事を始めた頃に8人の予約客が座った。
如何にも紳士という風格のある人物が予約したみたいだが、夫婦、老夫婦、4人の子供という家族連れだった。
見るからに頑固そうなお爺さん。席に座るなり「わしはシャブシャブのような鍋物がよかったのに。こんなナイフやフォークで食べるのは嫌いじゃ」と言われ、横に並んでいたお婆さんが「今日は、孫達へのプレゼントだから我が侭を言わないの」と嗜めた。
そんなやり取りに子供達が笑っている。頑固そうな爺さんを除くと本当に微笑ましいファミリーだった。
やがてメニューを見ながら注文が始まったが、耳に入った会話で、初孫の女の子がクリスチャン系の高校に在学しており、イブの日が満席で予約が叶わず、二日早い食事会であったようだが、お爺さんは、「当家は仏教じゃ。クリスマスなんて関係ない」なんて暴言を吐いている。しかし、子供達は終始笑顔で過ごしていた。
それぞれのオーダーが伝えられ、最後に残ったお爺さんが注文するだけとなったが、ここでお爺さんは誰もが驚く言葉を発した。
「わしは、西洋料理は嫌いじゃ。鍋焼きうどんが食べたかったのに」と確かに聞こえてきた。それを聞いたホテルスタッフがすぐに厨房室の方へ行き、しばらくすると戻って来て、我々の席などファミリーの周りの席にいた人達に言葉を掛け、「お許しくださいますでしょうか?」と結んだ。
厨房室でのやり取り、それは上司かシェフに相談したのだろうが、周囲の客達の了解が条件だったようで、我々が理解を示すと、すぐにファミリーのテーブルに向かい、お爺さんに「ご希望の鍋焼きうどん、ご用意させていただきます」と相成った。
紳士風の人物が周囲の客達に頭を下げている。如何にも申し訳なさそうな雰囲気だったが、周囲はそのやりとりを面白く見ながら楽しんでいたようで、お爺さんのとんでもない我が侭に対応したホテル側の配慮に拍手を贈りたい心情も生まれていた。
鍋焼きうどんは、きっと別のフロアにある和食レストランが対応するだろうと想像していたが、精算時に聞いたスタッフの話によると、うどんを除くすべての具材は厨房内にあったものだそうで、うどんだけが和食レストランから運ばれていた。
やがて出来上がった「鍋焼きうどん」が運ばれてきたが、その器は鍋ではなく、底の深い洋食器。もちろん中身は「鍋焼きうどん」だったが、そこにシェフ達の意地を垣間見た思いも。
ホテルスタッフが我々のテーブルに了解を得に来た事情を理解した。あの独特の出汁の香りがフレンチレストランの中に漂ったからだが、誰も咎める思いはなく、ファミリーが与えてくれた「お爺ちゃん、よかったね!」というひとときの出会いが嬉しく、その香りが何とも言えない幸せの香りのようの思えた出来事だった。
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