
東日本大震災の発生後に「絆(きずな)」という言葉がよく使われた。
困難に直面した時は心を一つにして助け合おう、といった意味である。
しかし「絆」は言葉としてどこか綺麗過ぎて、使えるシチュエーションが限られてくる。ちょっと“よそゆき”に聞こえる。(私個人の感覚としてだが)
それよりも「つながり」の方がわかりやすい。“心のつながり”と言えばだれでもイメージしやすい。
そんな「つながり」について考えさせられる話がある。
米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏が闘病中だった2009年、現CEOのティム・クック氏が当時上司だったジョブズ氏に、自分の肝臓を提供しようと考えたようだ。
クック氏は、衰弱が激しいジョブズ氏の容体を心配して血液検査を受け、自分とジョブズ氏の血液型が一致することを知った。
詳しい検査を受けた結果、クック氏の肝臓の一部をジョブズ氏に移植する生体肝移植手術は成功する確率が高いと診断された。
肝臓は再生が可能な臓器で、クック氏の肝臓は一部を切除してもやがて元の大きさに戻り、ジョブズ氏に移植された肝臓も大きくなるはずだった。
しかしジョブズ氏はこの申し出を拒んだ。
クック氏の回想では「彼は私がその言葉を口にする前に遮った」という。
「いや。君に決してそんなことはさせない。私も決してそんなことはしない」とジョブズ氏は言った。
ジョブズ氏が肝臓提供の申し出を拒んだのは、自分本位ではなかったからだとクック氏は振り返っている。
「スティーブが私を怒鳴りつけたのは、知り合ってからの13年で4~5回だけだった。そのうちの1回がこの時だった」
ジョブズ氏は自分の死期を悟った時、迷うことなくクック氏を指名した。アップルの未来を彼に託したのである。
2人の心は“初めから”つながっていた。

コメントはこちらから
あなたの心に浮かんだ「ひと言」が、誰かやあなた自身を幸せに導くことがあります。
このコラム「つながり」へのコメントを投稿してください。